家族信託とは?仕組みやメリットを初めての方にもわかりやすく紹介
2025/08/09
「家族信託」とは認知症や相続問題への対策として、財産を子ども等が生前に管理できるようにする契約です。
家族信託を活用すれば、認知症による財産の凍結が回避でき、自分が年老いたり判断力が低下したりしても、信頼できる家族が財産を計画的に管理・運用できます。
本記事では、家族信託の仕組み、メリット・デメリットを初心者にもわかりやすく解説します。
家族信託を導入するべきケースや活用事例についても詳しく紹介するので、親御さんやご自身の相続対策や老後に対する備えを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
家族信託とは?まずは基本を理解しましょう
家族信託とは、自分の財産の管理を信頼できる家族に託し、認知機能が低下したり身体を自由に動かせなくなった時も問題なく運用してもらうための契約です。
厚生労働省が毎年調査・発表している「高齢社会白書」を基に試算した結果によると、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人の方が認知症患者になる可能性が高いと言われています。
認知症等で判断力が低下したと銀行や医療機関で認定された場合、ご本人の保護を目的に財産が凍結され、口座から預金が引き出せなくなったり、所有する不動産や株を勝手に売却できなくなったりします。
財産を凍結されると本人の生活費や病院にかかる費用等も預金等から支払えなくなるため、配偶者や子ども、親戚等家族が大きな負担を強いられるケースも珍しくありません。
事前に家族信託を結んでおけば、認知症等で判断力が低下した時に本人の代わりに委任された人が財産を管理するので、財産の凍結を回避できます。
家族信託の仕組みと役割をわかりやすく解説
家族信託の仕組みとして、以下のことを理解しておけばわかりやすいでしょう。
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家族信託では「委託者」「受託者」「受益者」が公正証書による契約を結ぶことで成立し、必要なタイミングで財産を活用できます。
委託者となる人が財産の管理を信頼できる家族に託し、受託者となった方が管理や運用を行って得た利益は本来の持ち主である本人(受益者)が受け取れる仕組みです。
委託者・受託者・受益者の役割や契約の流れ・費用を詳しく解説します。
親が基本的に「委託者」になる
委託者とは、自分の財産を信頼できる受託者に預ける人を指します。
一般的には親が委託者となり、老後の財産管理や相続対策を目的に子どもを受託者として指名し、信託契約を締結します。
委託者の主な役割としては、以下のことが挙げられます。
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委任者になれるのは、認知機能や判断力が低下しておらず、自分で判断して契約内容や受託者を決められる人です。
認知症が発症した状態では委任者になれず、家族信託契約を結べないことも理解しておきましょう。
財産を管理する子が「受託者」
受託者は委託者から託された財産を管理・運用します。
通常は子供が受託者となり、親の財産管理を担うケースが多く見られます。
受託者の主な役割もまとめました。
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受託者が行う管理には、不動産等の託された財産の名義変更や賃貸物件の場合は新たな入居者との契約、物件の保全・補修等も含まれます。
万が一、託された財産のせいで第三者等に損害を与えた場合は、委託者が賠償責任も負う点には注意が必要です。
家族信託で利益を得る親が「受益者」
受益者は委託者が受託者に預けた財産から利益を受け取れる人を指します。
基本的には、委託者と受益者が同一人物=親となることが多いでしょう。
家族信託契約を結ぶことで、万が一認知症等になっても財産が凍結されず、受益者として口座の預金や不動産・事業収入等が受け取れるため、お金のことは心配せずに老後の生活を送ったり、治療に専念したりできます。
家族信託の手続きをする流れと費用
家族信託を利用する流れは、以下のとおりです。
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家族信託の契約は、書類を作成して公証役場に行き、公正証書化してもらうのがおすすめです。
公正証書化は義務ではありませんが、不動産や株等委託する財産の名義を受託者に変更したり、財産を管理するための信託口座を開設したりする際に法的な証明となるため、手続きがスムーズになります。
家族信託の契約にかかる費用も確認しておきましょう。
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もし、専門家に家族信託契約書の作成を依頼したり、アドバイスを受けたりする場合は上記の金額にプラスして20万~50万円ほどの報酬が相場です。
家族信託は公正証書化のための初期費用はかかるものの、契約を結んで運用を開始した後は維持費がほとんどかからないのも大きなポイントです。
家族信託のメリットをわかりやすく解説
家族信託は老後の心配や相続対策等の大きな味方になるほか、本人の意思を反映して自由に財産を管理できる点がメリットです。
家族信託のメリットを、具体的に4つ紹介しましょう。
1.認知機能等に問題が起きても財産を管理できる
将来的に認知機能が低下すると銀行口座等の財産が凍結され、預貯金の引き出しや不動産の売却等ができなくなる可能性があります。
家族信託を利用すると、事前の契約に基づいて受託者が財産を管理できるため、生活費や介護費用で本人や家族が困ることが避けられます。
また、受託者が代わりに不動産の新たな売買契約、賃貸契約等を結べたり、株や投資の運用も続けられるため、財産を保守したり活用したりできるのもメリットです。
2.財産を管理してもらう人を自由に決められる
認知機能が低下して財産の管理が困難になった場合、家族信託以外には成年後見人を指名して運用を依頼する「成年後見制度」が利用できます。
しかし、成年後見制度は家庭裁判所が後見人を決定するため、必ずしも親族が選ばれるとは限りません。
一方、家族信託では委託者が自分で自由に受託者を指名できるため、家族や信頼できる人に財産管理を任せることが可能です。
家族の中で財産管理をしたい人や、子どもや孫といった資産を引き継いでほしい人がいる場合に、家族信託はメリットが大きいと言えるでしょう。
3.遺言書と同じ使い方ができる
家族信託は本人が自分で誰にどの財産を託すか決められるため、遺言書と同じ効果を発揮します。
また、受託者は1人だけでなく、例えば子とそのさらに子ども=孫を指名しておくことも可能です。
受託者に万が一のことがあって管理を続けられなくなった場合は、孫が次の受託者となるよう契約書に記載しておけば、不本意な関係性の人に財産が渡ることを避けられます。
ただし、本来財産を受け取れたはずの人とトラブルになる可能性も考えられるため、親族同士でしっかり話し合いをしておく必要があります。
4.基本的に初期費用しかかからない
家族信託は財産管理ができる他の制度と比較しても、初期費用として最低で10万円ほどかかるだけで、継続的な費用負担が少ないのも大きなメリットです。
家族信託と同じく、認知機能が低下した際に財産を管理してもらえる成年後見制度では、運用開始後に後見人や後見監督人に報酬を毎月支払う必要があります。
家族信託は、契約を結ぶ際に公証役場で公正証書化する際の費用だけで、基本的にその後の報酬等はないため、長期的な財産管理を考えてもコストを抑えられるでしょう。
家族信託で知っておきたいデメリット・注意点
家族信託は認知症対策や老後の財産管理に役立ちますが、導入にはいくつかデメリットや注意点があります。
家族信託の注意点も理解したうえで契約を結べば、トラブルを避けられる可能性も高いので目を通してみてください。
家族信託で権限があるのは財産に関することだけ
家族信託で受託者(子)が委託者(親)に代わり行えるのは、財産管理に関することだけです。
例えば、病院や介護施設の入所手続きやサービスの契約・解約等は家族信託契約の範疇外なので、本人以外は行えない場合もあります。
認知症などの病気で本人が手続きするのが難しい場合に、家族がスムーズにサポートするためには、家族信託だけでなく任意後見契約等もあわせて結んでおくことをおすすめします。
相続人同士でトラブルになる可能性がある
家族信託は遺言と同じような効果を持つため、相続人がほかにもいる場合は不公平だと感じる人が出てくる可能性があります。
特に、家族信託で受託者が財産の管理や運用をすることで、他の相続人の法定相続分や遺留分を侵害したり、家族信託契約自体に納得してなかったりする場合はトラブルに発展する恐れがあるでしょう。
家族信託を行う際は、相続の対象となる家族や親族全員の同意が得られるよう、事前に話し合いをするのが大切です。
受託者は管理する財産に対する責任も持つ
家族信託の受託者は財産を管理する役割を持ちますが、万が一管理している不動産で管理者に原因がある失火や倒壊等で住民が被害を受けたり、事業や投資に失敗したりすると、損害賠償や補填等の責任を負うこともあります。
経営に支障が出たり損害が出ないように、管理を万全にしておくよう心がけましょう。
認知症が進行してからでは家族信託が結べない
家族信託の契約は、委託者(親)が十分な判断能力を持っていなければ成立しません。
すでに認知症が進行している状態では、家族信託契約の締結ができないので、将来を見据えて検討している場合は早めに準備しておくことをおすすめします。
家族信託を利用した方がいいケースとは?
家族信託は特に以下のようなケースで導入を検討するのがおすすめです。
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家族信託がおすすめな活用事例を具体的に紹介します。
ケース1.親の財産が凍結されるのを防ぎたい
親が持つ財産のうち、認知症等で凍結される可能性が高い預金や不動産、株等がほとんどを占める場合は、家族信託契約を結んでおけば安心です。
親が自分で財産を管理できなくなっても、受託者が管理や運用を継続できるため、生活費や介護資金も確保できます。
ケース2.親が所有する不動産や株の管理をしたい
親が複数の不動産や株式を所有している場合、認知症の進行により運用が難しくなることがあります。
家族信託を利用すれば、受託者が代わりに不動産の売却や賃貸契約の締結、株式の運用を行えるので、資産を減らすことなく老後資金も確保できる可能性があります。
ケース3.障害等を持つ家族の生活を守りたい
自分が財産を管理できなくなった時に、例えば障害を持つ配偶者や子等が生活していけるか不安な場合に、他の信頼できる家族を受託者に指定しておくケースもあります。
万が一の時は受託者となった家族が、障害を持つ親や兄弟の生活費等を託された財産から提供できるので、安心できる仕組みとして活用できます。
ケース4.財産を相続する人を指定したい
遺言書では二次相続先までは指定できませんが、家族信託では子どもがまず財産を継いで、その後孫に引き継ぐ等の希望をかなえられます。
財産を誰に引き継いでもらいたいか、孫の代まで指定したい場合に家族信託は有効です。
家族信託での不安や疑問は専門家に相談してみてください
家族信託を活用すると、財産を管理できなくなった時でも、ご自身や家族の負担や心配を軽減できます。
ただし、家族信託の契約内容や契約書の作成には専門知識が必要になったり、記載漏れや記載方法によっては希望どおりの信託ができなかったりする可能性もあります。
本記事では家族信託についてわかりやすく説明しましたが、不安な点や疑問がある場合は専門家に相談してみるのもおすすめです。
キャストグローバルでは、家族信託に関する無料相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

岡野 慎平
司法書士法人キャストグローバル 広島事務所 代表
株式会社キャストグローバル 代表取締役
司法書士法人キャストグローバル 中四国九州エリア統括
司法書士法人キャストグローバル広島事務所の代表を務め、株式会社キャストグローバル 代表取締役・司法書士法人キャストグローバル 中四国九州エリア統括として、グループ内の知見とネットワークを活かした支援体制の整備とサービス品質の向上に取り組む。司法書士としては相続を中心とした法的手続きを扱い、これまでに相続に関する相談・手続き支援を累計1,000件対応してきた。

北村 寿恵
相続コンサルタント
相続コンサルタントとして司法書士法人キャストグローバルと連携し、相続に関するコンサルティング業務を担当。終活セミナーをはじめとした企画・講師経験を活かし、専門的な内容をわかりやすく整理しながら、相談者の不安を「安心」に変える支援を信条としている。また、三原市福祉協議会の講演の講師も担当。これまでに相続・終活に関する個別相談を累計2,000件対応しており、司法書士と連携しながら、手続き完了まで誠実にサポートを行っている。
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