遺産相続時に知っておきたい「遺留分」を解説!仕組みや受け取れる範囲・割合は?
2025/01/17
家族が亡くなった場合、配偶者や子どもなど近い関係の親族は遺産を相続する権利があります。
しかし、遺言などで不平等な割合で財産が分配されることになった場合、遺産は十分に受け取れないのでしょうか?
結論、本来遺産を相続するはずの法定相続人は遺言の内容に関わらず、「遺留分」の財産を請求できる権利があります。
本記事では、遺留分の仕組みや受け取れる範囲・割合、注意点について詳しく解説します。
遺留分とは「法定相続人が最低限の遺産を受け取れる権利」
遺留分とは、法定相続人が最低限の遺産を受け取れる権利を保障する制度です。
例えば、遺言に財産のすべてを知人に相続させると明記されていたとしても、法定相続人が遺留分を請求すれば所定の割合で遺産を受け取れます。
つまり、遺留分は本来遺産を受け取れるはずの相続人がまったく遺産を受け取れない事態を防ぎます。
遺留分は原則お金で受け取れる
遺留分は原則として、認められた割合に相当する金銭を受け取れます。
2019年6月末までは「遺留分減殺請求」という法律により、不動産や株式などの財産を遺留分として取り戻す場合、ほかの相続人との共有財産となり不便を強いられるケースもありました。
しかし、法改正により「遺留分侵害額請求」という仕組みに変更され、遺産の分割が難しいときや財産の共有を避けたい場合に、金銭で遺留分が受け取れるようになっています。
遺留分を受け取れる相続人の範囲と割合
遺留分を受け取れるのは、法定相続人として法定相続分の遺産を本来受け取るはずの配偶者や子、直系尊属(親や祖父母)です。
遺言書がなく、特に取り決めがない場合に法定相続人となる可能性がある兄弟姉妹やその子(甥・姪)には、遺留分は認められていません。
遺留分が認められている法定相続人には、本来遺産を受け取れるはずの法定相続分がそれぞれ決められており、遺留分も法定相続分の割合に沿って決定されます。
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つまり、遺言書で財産の配分が指定されている場合に遺留分として認められるのは、遺産全体の最大半分までです。
配偶者+子または直系尊属で相続する場合
被相続人(亡くなった方)に法定相続人として配偶者がいる場合、遺留分の割合は遺産全体の1/2です。
また、配偶者以外に子または直系尊属(親や祖父母)がいる場合は、全体の1/2を全員で分け合います。
もし、遺産総額が5,000万円あり、遺言書で全額を寄付する旨が記載されていた場合、配偶者と子、または直系尊属の法定相続分に沿った遺留分の配分は以下の通りです。
配偶者と子がおり、子が亡くなっている場合はその子(被相続人の孫)に代襲相続ができます。
また、被相続人に配偶者がおり、子がいない場合は、配偶者と直系尊属で遺留分を相続します。
子のみで相続する場合
被相続人の配偶者がおらず、子のみが相続人となる場合も、遺留分の割合は遺産の全体の1/2です。
例えば、遺産総額が5,000万円だった場合、子ども2人の遺留分の配分は以下の通りです。
もし子どもが1人のみなら遺留分として全体の1/2(2,500万円)を受け取り、3人なら全体の1/6ずつ(約833万円)を相続します。
直系尊属で相続する場合
被相続人に配偶者も子もいない場合、直系尊属のみが遺留分を受け取れます。
父や母、祖父母といった直系尊属が相続人の場合、遺留分の割合は遺産全体の1/3です。
遺産総額が5,000万円だった場合、直系尊属の遺留分は約1,666万円です。
被相続人の父も母も存命の場合は、それぞれが遺留分として全体の1/6ずつを相続します。
遺留分を請求する3つのステップ
遺産相続において遺言書により法定相続分より、少ない財産しかもらえないとわかった場合、権利を主張して請求をしなければ遺留分は受け取れません。
遺留分の請求は以下の3つのステップで行います。
1.相続人同士での話し合い
2.遺留分侵害額の請求調停の申し立て
3.遺留分侵害額請求訴訟を起こす
もし、ステップ1の話し合いで相手が遺留分を認めるのであれば、ステップ2の調停やステップ3の訴訟を起こす必要はありません。
また、遺留分を請求するかは法定相続人の意思に任せられるため、請求をせず故人が遺言書に遺した内容を尊重する選択肢もあります。
1.相続人同士での話し合い
遺留分を請求する場合、まずは遺言により財産を多く受け取る相手に内容証明郵便で「遺留分侵害額請求書」を送付します。
遺留分侵害額請求書は、法定相続人の遺留分を侵害しているため返還してほしい旨を相手に伝えたと、公に証明するために送るものです。
遺留分侵害額請求書を受け取った相手と円滑に話し合いができるのであれば、遺留分を認めてもらい金銭などで返還してもらうことで、スムーズに解決できます。
話し合いで遺留分の返還に対する合意が得られたら、後日トラブルにならないよう「遺留分の返還についての合意書」を作成しておきましょう。
2.遺留分侵害額の請求調停の申し立て
もし、相続人との話し合いで遺留分の返還に合意が得られない場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」の申し立てができます。
遺留分侵害額請求調停を申し立てると家庭裁判所の調停委員を交えて再度相続人同士で話し合いが行われますが、有利に交渉するため弁護士に同席や代理を依頼するのもおすすめです。
遺留分侵害額請求調停で相手が遺留分を認めれば、調停調書の作成と返還により解決します。
3.遺留分侵害額請求訴訟を起こす
遺留分侵害額請求調停でも解決しない場合は、裁判所で「遺留分侵害額請求訴訟」を起こせます。
遺留分侵害額請求訴訟を起こす際は、訴状やあらかじめ相手に送付した遺留分侵害額請求書のほか、遺言書の写しや被相続人と相続人全員の戸籍謄本、財産の目録など様々な書類が必要です。
遺留分侵害額請求訴訟となった場合は、書類や証拠などを加味して裁判所が最終的な判断を下し、結果的に遺留分が認められれば相手が返還に応じなくても財産を差し押さえるなど強制執行ができます。
遺産相続で遺留分にまつわる注意点
遺産相続で遺留分を主張する際には、以下の注意点も理解しておくとよいでしょう。
- 遺留分侵害額請求権には時効がある
- 生前贈与にも遺留分は請求できる
- 相続放棄する場合は遺留分も認められない
- 不動産を相続する際の遺留分は相続開始時の価格が基準
法定相続人としての権利を守るために、目を通してみてください。
遺留分侵害額請求権には時効がある
遺留分侵害額請求権には時効があり、相続の開始と自分が相続人であることを知り、なおかつ遺留分の侵害を知った時から1年以内に請求しなければ認められません。
また、相続の事実や自分が相続人であると知らなかった場合でも、相続開始から10年経つと遺留分を請求する権利は認められないため注意が必要です。
時効が迫っている場合、内容証明郵便で「遺留分侵害額請求書」の送付を行えば遺留分の請求の意思を伝えたことになり、その時点で時効はストップします。
時効による権利消失を防ぐためにも、まずは相手に「遺留分侵害額請求書」を送るのがおすすめです。
生前贈与にも遺留分は請求できる
被相続人が生前に行った贈与も、遺留分の対象として認められます。
ただし、遺留分の請求ができるのは相続開始前の1年間に行われた贈与(受贈者が法定相続人以外)に限られます。
相続放棄する場合は遺留分も認められない
法定相続人でも相続放棄すると、そもそも相続人ではない扱いになるため、当然遺留分も放棄したことになります。
また、相続人として不適格であるとみなされた相続欠格者や相続廃除者も遺留分を請求できません。
不動産を相続する際の遺留分は相続開始時の価格が基準
遺産に不動産が含まれる場合、相続開始時の価格を基に遺留分の額を計算するのが一般的です。
もし、遺留分が認められた後に土地や建物の価値が変動しても公平に分配されます。
不公平な遺産相続には遺留分が大きな味方となります
遺留分は、法定相続人が最低限の遺産を確保するための制度で、遺言書や生前贈与により不公平な相続が行われることを防げます。
ただし、遺留分として認められるのは遺産のうち最大1/2で、請求するには「遺留分侵害額請求書」の送付や場合によっては調停・訴訟の可能性もあります。
遺留分は法定相続人に認められている権利なので、円滑に受け取るために相続の専門家などの力を借りると良いでしょう。
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